日本を再生させる簡単な経済のはなし
今週、本屋さんでなにげなくなにかおもしろい本がないかとぶらぶらしている時に、
「さっさと不況を終わらせろ」
増税や支出削減はいまやることじゃありません。
とのタイトルが目に入ってきました。
私自身こんなに需要が落ち込んでデフレの日本で増税や支出削減をやったらとんでもない事になると思っていたため、このタイトルがすーと入ってきたのでしょう。
そこで、手にとって見てみると著者は2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン。信頼できる学者であり、ぱらぱらとめくってみると、そんな硬い文体でなく読みやすく書いてあるので、早速買って今読んでいるところです。
実はこの本、日本についてではなく主にアメリカの経済の状況と政策について書かれており、その分析の中には日本の状況を教訓にしている部分も含まれていて、読んでいて非常に納得できる内容になっています。
アメリカについて主に書かれていますが、ユーロを防衛しなくてはならないヨーロッパのことと違って、日本にも充分に当てはまるものとなっています。
さて、ここで少し復習です。
みなさんも経済の基礎で不景気になったときに行なうべき政策が二つあることを昔習いませんでしたか?
1.不景気になったら金利を下げなさい。
そうしたら、低くなった金利を利用して、設備投資をしようという企業や、住宅を建てようという人が増えて景気が良くなります。
2.金利を下げても効果が薄ければ、民間で不足した投資を政府が財政投資をして不足を補って景気を浮揚させなさい。
こんなことをならいましたよね。
しかし、日本については、バブル崩壊以降日銀が実質ゼロ金利を続けましたが、景気は良くなりませんでした。これは、「流動性の罠」に陥ってしまったからだとこの本で解説してくれています。
現在の日本に置き換えてみると、私たち日本人の所得は1996年をピークに下がり続けています。また、雇用も正社員から非正規雇用にシフトを続けていて、いつ解雇されるか不安が増大しています。
このような状況においては、お金を借りて大きな買い物をしようという気にはならないのが一般的です。
また、企業についてみてみましょう。
日本の高度成長期においては、物が不足していて、作れば売れるという状況でした。したがって、金利が低くなれば、このチャンスにお金を借りて生産力を上げようという強力なモチベーションが働いたのです。
ところが今の日本の製造業の抱えている問題は、生産力が足りないのではなく、如何に売れるものを生み出すかというものに変わっているので、金利が安ければすぐに設備投資とはつながらないのです。
2.政府の財政投資
これは、かのケインズが唱えた理論で私たちの世代では常識と言える景気浮揚策です。
ところが現在の経済危機においては、そんなことをしたら財政が破綻してギリシャのようになってしまうとこれに異論を挟む方がマスコミを含めて多くなっています。そして、その議論にのって消費税増税を決めてしまったのが、民主、自民、公明の3党合意なわけです。
日本においては、箱物行政と言われるように、自民党が散々経済効果の薄いものに無駄遣いを続けてきたのが明らかになったせいで財政投資=ばらまきというイメージになってしまい、蓮舫さんの事業仕訳劇場につながったわけです。
でも、財政投資がすべて悪いわけではありません。
週に1回しか飛行機が来ない飛行場を作ったり、一日に数台のトラクターしか通らない立派な広域農道を作ったり、ほとんどイベントが開催されない豪華ホールを作ったりするのはやめなくてはなりません。
しかし一方、経済効果が大きいものや、日本の競争力を高めるような投資は、民間需要が不足している現在、バンバンするべきなのです。
たとえば、かつて東海道新幹線や東名高速道路を建設した時、当時の日本にとってはとても大きな負担だったことでしょう。
しかし、それらを建設したことで、日本の物流が活性化し、日本にどれだけ大きな利益をもたらしたのか、その経済効果が計り知れないほど大きいのは誰にでも分かることです。
投資した額の何倍もの額が税収として戻ってきたことでしょう。
では、今だったらどんな投資をすればいいのか?
また、新幹線や高速道路?
東海道新幹線や東名高速道路は日本の大動脈を作ったということで、その経済効果は計り知れませんでしたが、人口や交通量がはるかに少ない地方に作っても、その経済効果は投資以上になる事はないのではないでしょうか?
では、なにか。
一つはっきりしているのが再生可能エネルギーの開発に対する投資でしょう。
経団連などは、原発をなくする日本経済が成り立たないといっていますが、原発は未来永劫世界を支える夢のエネルギーにはなりえないことは、福島の事故で世界中の人に知れわたってしまいました。
使用済み燃料の再処理方法も無い中、今後も原子力にお金を投下するより、再生可能エネルギーは、今、政府のお金をかけて世界に先駆け実用レベルに持っていくことが出来れば、今後世界中で使われる事が確実なエネルギーになります。
トヨタのハイブリッド技術のように、日本の省エネ技術は世界の最先端を行っています。
また地熱発電の技術も、2010年の時点で、富士電機、東芝、三菱重工の日本企業3社が世界の地熱発電設備容量の70%のプラントを供給しているように世界をリードしています。
燃料電池も水素と酸素を反応させ電気を作り出し、排気には水が出来るという非常にクリーンな技術です。そして太陽光発電。
これらの次世代エネルギー開発に日本の財政投資を注ぎ込むことで開発を加速し、世界に先駆け再生可能エネルギーは日本という地位を確立することが出来れば、将来投下したものの何倍もの税収になって帰ってくるのは確実でしょう。
また、東日本大震災の復興は、今の日本において最重要課題の一つです。これも、必ずやらなければならない巨額な投資です。
これを、従来の通りに戻すというような投資にするのではなく、例えば世界中から企業を呼び込める都市づくり、あるいは世界中から観光客を呼び込める地域づくりなどのビジョンを描いて地域全体を整備する方向で投資をすれば、その経済効果は、その時に投じた建設費にとどまらず、その後の経済効果として地域が発展し、何倍かの税収になって戻ってくることでしょう。
このような財政投資によって、今、日本で圧倒的に不足している需要を作り出し、その経済効果で税収を上げることを行なわないで、今のように単に増税によって税収を上げようとすると、逆に経済が停滞し、増税したにもかかわらず税収が落ち込むことになってしまいます。
今、日本でヨーロッパで言われている、増税、緊縮財政について、それが誤っていることをクルーグマンは指摘しています。
(ここから引用)
ありがたいことに、国際通貨基金(IMF)の研究者たちが面倒な作業をやってくれて、1978年から2009年の間に先進国でなんと173件もの財政緊縮の事例を見つけた。そして、財政緊縮政策の後には経済の収縮と失業の増加が起こることを突き止めたのだった。
(ここまで引用)
今日本人は、平均して3,000万円の資産をお墓まで持っていくといわれています。これは、私たち日本人が自分の将来に不安を抱えていて、それが解決される方向が見えないから自己防衛のためお金を使わない状態になっているからだと思われます。
不安だから使わない。使わないから更に景気が悪くなる。景気が悪くなるから更に不安が大きくなって使わないという悪循環に陥っています。
野田首相は、増税すれば将来の不安が解消してお金を使うようになるといっていますが、消費税が上がることによって不安が無くなる人なんているのでしょうか?
逆に、今、エネルギー供給の将来の不安を解消し、日本を再生エネルギー分野でのトップの地位に押し上げ、日本の将来の競争力を上げるために、これだけの投資をします。その結果、この分野の世界市場を日本が独占的に占める事によって、税収が上がり今回投資する何倍にもなって帰ってきます、といった方がはるかに将来に対する希望ができ、日本人の不安を解消できるのではないでしょうか?
今の日本に不安を感じている人はぜひこの著作を読んで、消費税増税に反対してほしいと思います。
「さっさと不況を終わらせろ」
ポール・クルーグマン著 早川書房
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