日本を再び輝ける国にするために!〜日本の目指すべき方向:価格競争から知恵の競争へ

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先週の「なんで日本は世界に注目される国から夢のない国に転落したか? インド・中国のインパクト」のなかで、日本が輝いていた1990年代初頭と現在では大きく世界が変わってしまったことを見ました。



◆中国やインドなど新興国はまだ大きな存在感を示していなかった
◆インターネットの存在
◆携帯電話・パソコンの役割
◆日本の人口の変化


そこでは、この4つの要因をあげ、その中でもインドと中国のインパクトの大きさを取り上げました。

このインドの躍進の状況は、前回このブログでお伝えしたとおりです。


http://d.hatena.ne.jp/DCEC/20100607/1275873808

インド企業の品質のレベルは非常に高く、アメリカ政府がソフトウェアの調達企業を判断する基準としているCMMiの最高レベル5と認定されているインド企業は75に達していて、日本の8企業を大きく引き離しています。

CMMi(Capability Mutuality Model Integration)
カーネギーメロン大学ソフトウエア工学研究所(SEI)で開発した、ソフトウエアプロセスの成熟度を判断する基準。

日本では2006年時点で下記8社がレベル5に認定されている

日本電気株式会社(NEC)  2003年2月28日認定
株式会社ジャステック  2003年10月17日認定
日本ユニシス株式会社  2004年1月23日認定
NTTコムウエア株式会社  2004年2月27日認定
日本アイ・ビー・エム株式会社  2004年6月23日認定
東芝株式会社  2004年8月9日認定
株式会社CSKシステムズ  2006年3月24日認定
株式会社野村総合研究所  2006年6月2日認定

(ちなみにNTTデータCMMi5を目指してきて、2009年12月になってやっと認定されたそうです。)

またそのインドのIT企業Infosysは、キャンパスと呼ばれる広大な敷地の中にコンピュータ設備、教室、各国料理が楽しめるフードコート、宿泊施設はもちろん、クリケット、テニス、ボーリング、スカッシュなど各種インドア・アウトドアスポーツ施設、映画館や医療施設も用意され、従業員が快適に過ごせるよう配慮された環境は私たちが持っているインドのイメージからはかけ離れた環境で有名です。

http://www.infosys.com/japanese/careers/training/training_02.html



ここで言うところの「世界のフラット化」に日本以外の国はいちはやく適応しました。

すなわち、アメリカや欧米の企業は、中国やインドを敵に回して対抗するのではなく、アウトソーシング先として自分の中に取り込んでうまく活用しているのです。


そして国の発展段階に応じて、自分の得意で差別化できる分野に資源を集中し、その他の部分をアウトソーシングすることで競争力を保っていると言えるのではないでしょうか?

例えば、今世界で一番輝いているメーカーの一つApple
パソコンなどの製造を全面的に中国や台湾などの企業に外部委託しています。
Appleの強さは、メーカーでありながら製造の強さではないのです。

このAppleを見ることで、日本の製造業の将来の方向を探ることができるかもしれません。


Appleはかつて、スティーブ・ジョブズスティーブ・ウォズニアックが創立し、Apple 2をヒットさせ上場し、その後にMacintoshも大ヒットさせましたが、スティーブ・ジョブズジョン・スカリーによってAppleを追い出された後、低迷期に入ります。

その後、復帰したスティーブ・ジョブズが今までの常識を超える半透明(トランスルーセント)筐体を採用したパソコンiMacをヒットさせ、復活しますが、現在の地位を築くきっかけは、ソニーが切り開き先進のイメージを作り出した携帯音楽プレーヤーの分野にiPodを投入して全世界的にヒットさせたことでした。

実はこのiPodのヒットに鍵があります。
このiPad、何が優れていたのでしょう。

音楽プレーヤーですから、音がめちゃめちゃ良かったのかというとそうでもないようで、今でも色々なクチコミを見ていると音はソニーの方がいいという声が多いようです。

つまりAppleの勝因は、iTunesというソフトウェアを使い、iTunes Storeから好きな曲だけを1曲99セントという格安な価格でダウンロードして購入出来、そのままiPodで聞けるという仕組みを作ったことなのです。

これは、アップルがこの仕組みを作り、音楽プレーヤーと音楽配信のプラットフォームを押さえたということで、今後の携帯音楽プレーヤー市場での競争では圧倒的に有利な立場を築きあげたのです。

プラットフォームを作り上げるとは、例えばマイクロソフトWindowsでパソコンのOSのプラットフォームを作り上げ、その後はどこのメーカーのパソコンも、あるいはアプリケーションソフトウェアWindowsのうえで動くようにしなければならなかった、そしてそれがマイクロソフトに圧倒的に有利な立場を提供してきたということはご存知の通りです。


実は同じ時期、ソニーもユニバーサル、EMIと組んで、プレスプレイという音楽をダウンロードできるサービスを開始していたのですが、その使い勝手が悪かったため、iTunesに負けてしまいました。

iTunes Storeで買った曲は、いつまでも自分のiPadの中に保存しておけますが、プレスプレイは毎月10ドルを払えば100曲のストリーミング再生と100曲のダウンロードが出来るということでしたが、ダウンロードしてから30日すると再生できなくなるという、音楽愛好者の利用の仕方を理解しないものでした。これは、音楽の消費者の利便よりも既存の音楽レーベルの都合を優先するものでした。

いうなれば、ソニーは音楽プレーヤーの再生する音楽がきれいに聞こえる事にこだわったのに対して、アップルは、ユーザーの使い勝手の良さにこだわったといえるでしょう。

アップルは、メーカーでありながら製造現場は中国や台湾などの企業に任せてしまい、自分たちはどのようなモノを作るのかのコンセプト作りや、ハードウェアの設計、仕様を決定すること、そしてユーザーが使いやすい環境をつくる仕組みづくりなど差別化する核となる部分を担当しているのです。そして、毎回新製品を自分で発表するスティーブ・ジョブズのプレゼンを見ていると、そのデザインへのこだわりが半端じゃないというのが分かります。

こちらで、今週発表されたiPhoe 4の彼のプレゼンが見られるので、ご覧になってみてください。

http://dcec.blog27.fc2.com/blog-entry-27.html

考えてみれば、アップルが自分でやっている部分は、中国のコストの安い人員ができないことばかりなので、中国の安い人件費に対抗して派遣に置き換えるというような人件費削減競争になることがないことがわかります。

そしてiPodは最初は音楽プレーヤーだったのが、iPod touch になると、音楽ばかりでなく動画の再生やインターネットへの接続もできるようになって、小型のPCのようなものになりました。そしてそれに電話機能がつくとiPhoneになり、電子ブックプレーヤーを搭載してiPadになってとどんどん拡張しています。

ソニーウォークマンは未だ音楽プレーヤーのままで、iPodはその後大きく進化したことがわかります。そして、またアップルのすごいところは、iPod touchiPhone で動くAppといわれるアプリケーションを誰でも作ることができ、それをiTunesストアで売れるようにしたことでしょう。

結果として、現在iPadで動くアプリケーションはすでに膨大な数に上っており、今後他の会社が、性能がよく価格も安いタブレット型PCを発売したとしてもそれで使えるアプリケーションが少なければ、iPadと比較して魅力は大きく劣ってしまいます。

iPodウォークマンの戦いが、携帯音楽プレーヤーのモノそのものの戦いではなく、プラットフォーム作りで勝負が決まったことがわかっていただけましたでしょうか。

ですから、今後日本の企業も、グローバル競争に勝ち抜いていくためには、モノそのものを磨き上げることばかりに注力していると、中国、韓国などとの競争になり、コスト競争、人件費削減競争の継続になってしまうことを認識して、いかに有利なプラットフォームを構築できるかに注力しなければなりません。

そんななかで、実は今、もう一つ今後市場が大きく拡大していくと思われる分野でのプラットフォーム作りで熾烈な競争が行われており、その競争に日本企業は参戦出来ていない事をご存知でしょうか?

それは、・・・。

電子書籍

iPadが発売されて、日本でもにわかに注目を集めていますが、この電子書籍の分野でこれからのスタンダードになるべきプラットフォーム作りで、アマゾン、アップル、そしてGoogleの間で激烈な競争が行われています。

これについて、詳しく書き出したら、このメルマガ何回分かになってしまうほどの内容ですので、さらっと触りだけご案内いたします。

電子ブックプレーヤーでは、まずアマゾンがKindleという物を発売してアメリカで大ヒットになり、2007年の発売からわずか二年ほどで300万台以上が売れ、2009年のクリスマス商戦では、アマゾンでの紙の本の販売数よりもキンドルストアでの電子書籍の売上が上回ってしまったという事からも、これからの書籍は、紙よりも電子書籍に移行していくことが予想されます。

この電子ブックプレーヤー。我らがSONYも売出しており、現在アメリカではキンドルについで売れているので期待できそうに見えますが、実はこの戦いもプラットフォーム作りの戦いであるという本質からみると、今のままではSONYに勝ち目はないように思われます。

アマゾンはキンドルを出すときに、アップルが音楽プレーヤーの分野でどのようにプラットフォームを作ったかを徹底的に研究して、その戦略を再現したと思われます。


1.キンドルストアで買う書籍の値段を徹底的に安く設定した(通常2,500円程度のハードカバーを9.99ドル=約900円で販売)

←アップルは音楽の1曲の値段を99セントと安く設定した

=価格決定権を出版社からアマゾンが奪った

実は、アマゾンは、出版社から約13ドルで電子ブックを仕入れているので、電子書籍を1冊売るごとにアマゾンは約3ドル損をするのですが、損をしてでも電子書籍のプラットフォームを確立するために、そのような戦略をとったのです。



2.電子書籍の購入から読めるようになるまでの手間を徹底的に省き、利便性を高め、キンドル、PC、iPhoneのどれからでも読めるようにした。

←アップルはiTunesiTunes storeを一体化し、音楽の購入から管理、そしてiPodだけでなく、CDにもできるし、様々な機器で聞けるようにした。


キンドルは、非常に良く出来ています。実はキンドルには、携帯のデータ通信機能が内蔵され、また、購入時点で購入者のアマゾンアカウントが登録されているので、キンドルが届いたらすぐに、購入メニューから「キンドルストアで買う」を選択し、欲しい本を選んで「購入」ボタンを押せば、もう本の購入が完了してしまいます。
この時の通信費はすべてアマゾン負担なので利用者には請求されません。

本屋まで行って、本棚を探し、なかったら別の本屋に行き、などと言う手間は一切かかりません。また、アマゾンで紙の書籍を購入するのも非常に便利ですが、それでも購入から手元に届くまでは1〜2日はかかるし、ベストセラーなどで在庫がきれていると、数日から数週間待たなければならない事から比べると格段に便利です。

そしてもうひとつ驚きなのが、ひとつの本を様々な機器で読むことができる事です。

キンドルには、キンドル本体を購入する以外にKindle For PC やKindle For iPhoneなどのソフトウェアがあり、無料でダウンロードすることができます。

そしてそれらの機器間で、本の状態が自動で同期されます。

どういう事かというと、私が今、キンドルで読んでいる本があるのですが、たとえば、休みに日に家でPCで読んで、次の日通勤の時にiPhone(私は今iPod touchですが)でその本を開くことができ、その開いたときには、昨日PCで読んだページまで移動した状態で開くことができます。

そして、そのキンドル上で重要なところに線を引き、メモを書き入れる事もできます。

どうですか?
ものすごく便利ではないですか?

さらには、アマゾンはすでに42万点もの電子書籍を購入できるようにしています。


こんなに便利な仕組みを作り上げてしまえば、もう、電子書籍のプラットフォームはアマゾンが握ってしまったと思いそうですが、そこに挑戦したのが、元祖プラットフォーム作りの達人アップルでした。

アップルはiPad電子書籍を読めるようにしてこの競争に参入しました。

電子書籍リーダーという機能だけで見ると、キンドルは液晶ではないeインクという仕組みを使っているので、バックライトの液晶と比べて目が疲れにくい。電池のもちはiPadと比較にならないぐらい長く持つ、というアドバンデージを持っています。

それに対してiPadは、カラーなのでカラフルで楽しいと言うこと以外に、電子書籍リーダ−単機能ではなく、様々な機能を持っているので、iPadがあれば、本を読み、インターネットをブラウズでき、ゲームもできれば、動画や写真も見られると様々に活用できる強みを持っています。

そして、電子ブックリーダーとしても物ばかりでなく、プラットフォーム作りでもアマゾンを切りくずしにかかりました。

アマゾンは、iPadが出てくるまでは65%の販売手数料を取っていました。
すなわち著者側には35%しか残らなかったわけですが、そこに後から参入したアップルは、アップルは電子書籍の推奨価格(ハードカバー)として、12.99ドルと14.99ドルを提示、出版社側が価格設定できるとし、売り上げの取り分(印税)は出版社側70%、アップル30%としました。

これは出版社側から見ればアマゾンよりもはるかに有利になります。
しかも、既存のハードカバーの書籍との価格差も縮まるので、紙の書籍の売上にたいする影響も少なく抑えられると考えられます。

いかがでしょう、このアマゾンとアップルの戦い。勝敗の行方は物としての電子書籍リーダーの性能などと言う次元を超えたプラットフォームの奪い合いになっているのをお分かりいただけると思います。

実は、ここにGoogleが独自のやり方で電子書籍の市場にアプローチしているのですが、それまで絡めると終わらなくなってしまうのでここでは触れません。

ただここまででも、世界の競争の舞台が仕組みづくりの競争、知恵の競争へとシフトしてきており、日本の目指すべき方向が見えてきたのではないかと思います。



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